研究プロジェクト

龍谷大学・食農研・研究プロジェクト・3

研究課題 2016-2017

RAD-seqを用いた、遺伝的浸透のある種の持続的な遺伝的復帰方法の確立
Genetic restoration of introgressed species using RAD-seq

研究代表

永野 惇 (ながの あつし)    

農学部 植物生命科学科 講師 情報生物学

共同研究者

手塚あゆみ   龍谷大学 食と農の総合研究所・博士研究員 分子生態学

希少な在来家畜を遺伝子浸透から復帰させ、持続可能な交配計画を作る
在来の家畜それぞれ、その地域の環境に適応しています。そのため、在来家畜の中には、近年問題となっている温暖化や病気の蔓延に対して有効な性質を持つ品種も報告されており、重要な遺伝資源であると言えます。しかしながら、経済性、生産性に重きをおいて進められた家畜の単一品種化により、在来の家畜の品種数・個体数は急激に減少し、さらに前述の単一品種と在来家畜の無計画な交雑(遺伝子浸透)も進んでおり、遺伝資源が失われつつあります。在来家畜の遺伝子資源をいかに保持するか、交雑してしまった品種から如何に戻すのかは重要な課題であると言えます。
この研究では、日本在来馬の「対州馬」をモデルとし、希少な在来家畜の遺伝子浸透からの復帰と遺伝的多様性の維持を同時に実現する交配計画を立てることを目的としています。対州馬は日本の在来の馬で、長崎県対馬市の農耕馬です。山がちな土地に適した短足で小柄な体型、雑草を食べて冬場を越せるといった対馬の風土に合わせた特徴をもちますが、戦時中に戦時利用のために外来馬との交雑を起こしています。また、農業の近代化により役割を失い、急激に個体数が減ってしまったため、遺伝的多様性が減少し、絶滅に危機に瀕しており、遺伝子浸透からの復帰と遺伝的多様性の保持が急務です。どのくらい遺伝的多様性が減少しているのか、ゲノムのうち、どこが対州馬の遺伝子で、どこが侵入してきた外来の遺伝子なのかは遺伝子配列を調べることでしかわかりません。本計画では、ゲノム全体を網羅的に調べることのできるRAD-seq法を用いて対州馬のゲノムの本来の部分、外来の部分を高解像度で分離します。そして、遺伝子配列情報を元に、どういった個体同士の組み合わせで交配することで、外来の遺伝子を取り除き、対州馬本来の遺伝子を残せるのかをシミュレーションにより明らかにしようとしています。この方法は、他の在来家畜、希少な生物にも応用できると考えています。

このページのトップへ戻る